「着任早々、旧方式はいっさい排し、見たとおり、自由に、思ったように、感じたように制作・作画するようにと言い渡された。(中略)旧美校の厳重なアカデミズムから解放を得た学生達は、喜びに燃えた。しかし、次にくるのは「自由に描く」その自由の意味を全く知らない者がとまどう混乱であった。厳しいながら淡々とした道から、いきなり指標のない茫漠たる砂漠に放り出されたようなものである。特に十六、七歳の技術・技法・技巧のみを当面の目標に絵を学んでいた私には、本当に絵が全くわからなくなってしまった」

加山又造「老巨匠と画学生」『小林古径 作品と素描II』所収、光村図書出版、1983年

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