身辺雑記
「われわれがここにいることは、誰かがすでに成し遂げたことをなぞるためではない」

「画家は自分の愛するものを探し求め、それをつかまえようとする。それは、どこにでも、いたるところにある。だが猟師の目をもたなければ、それを見ることはできない。猟師は見ることと理解することを学びーそして、味わう」

「絵画は、さまざまな気分を適当につぎはぎしたパッチワークになってはいけない。最初の強い印象を保つことが大事だ」

ロバート・ヘンライ『アート・スピリット』
パウロ・フレイレ「思考は自らのみにとどまる思考ではなく、また他から押し付けられるものでもない。現実によって媒介され、相互のコミュニケーションから生まれるものでなければならない」
芸術の天地は自由にして拘束なく準縄なし、此天地の間に翺翔する吾等の芸術は吾等自己の芸術にして官僚の芸術に非ず、権門勢家の芸術に非ず、又師承模倣の芸術に非ざるなり
時々、私はこんなことを想像することがある。いつか私が死に、お棺のまわりで通夜の友人たちが私について色々語ったとする。あいつはイイ奴だったとかイヤな奴だったとか、たくさんのその人たちの眼を通した「私」が語られるがー それをじっと聴いている私はやっぱり棺のなかで呟く。
「いや、俺はそれだけじゃないぞ。それだけじゃないぞ」

遠藤周作「自分の名について」
「美術館、この言葉には強い憧れがありました。私が育った福島市に県立美術館ができたのは1984年のことで、高校在学中までは美術館で芸術作品を鑑賞するには、他県に足を延ばす以外ありませんでした。高校を卒業し、上京してからは、都内近郊の美術館に足を運び、意中の作品を展覧会開催中何度も観ることができ、あるいは学芸員の作品解説に立ち会える等、自分にとって身近に美術館が存在することは何ものにも代え難い喜びでした」

丹治嘉彦「特集1 新潟県立近代美術館開館30周年 特別寄稿@ 新潟県立近代美術館のこと」(『新潟県立近代美術館だより 雪椿通信』第56号、新潟県立近代美術館、2023年4月)